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「AI社員」というと、マーケティング担当AIや事務担当AIのように、人間の仕事を代行させる仕組みを指すことが多いと思います。僕が作りたかったのは、少し主眼の違うものでした。Claude Codeのように裏側で働くAIがいるなら、それぞれを社員としてオフィスに配置して、今どんな仕事をしているのかをゲームのように眺めて楽しみたい。そこから始まったのが「AI Company Dashboard」という実験です。
7月の数日間で集中して作りました。ブラウザを開くと、ピクセルアートのオフィスにリサーチャー・事業企画・デザイナー・エンジニア・QA担当・批判担当・統括プロデューサーの7人のAI社員が席についていて、Claude Codeが手元で動き出すと、作業の内容に応じて担当の社員が働き始めます。

どういう仕組みか
土台はシンプルです。Claude Codeにはツール実行やセッション開始などのタイミングで外部プログラムを呼べるHooksという仕組みがあるので、そこに小さなアダプターを挟み、「いま何をしているか」をローカルのイベントサーバーへ送ります。サーバーはNode.jsの標準httpだけで書いた小さなもので、受け取ったイベントをSSEでブラウザへ流し、React製の画面がピクセルオフィスとして描画します。
送る情報は絞りました。「調査中」「実装中」「検証中」といった工程の種類と固定の短文だけで、プロンプトの本文・ファイルパス・コマンドの中身・環境変数は読み取りもしません。サーバーは127.0.0.1でしか待ち受けず、外部APIもデータベースも使わない。眺めて楽しむための仕組みに、漏れて困るものを乗せない設計です。
最初の段階では、7人は1つのClaude Codeセッションの作業を役割に振り分けた表示でした。ファイルを読んでいればリサーチャーが動き、コードを書き始めるとエンジニアに交代する。ここから発展させて、後半では役割ごとのサブエージェントを実際に起動・追跡し、本物の「複数稼働」を表示できるようにしました。7つの役割はエージェント定義として正式に登録してあるので、特定の社員に実際の仕事を振ることもできます。
会社ごっこを、ルールで本気にする
可視化を作っていくうちに、実際に仕事を振れるところまで来ると、今度は「会社として回す」ための決まりが要ることが分かってきました。見た目を会社らしくするのと、仕事を安全に回せる会社にするのは別問題です。そこで制作の台帳をサーバーに持たせ、役割のルールを機械的に強制するようにしました。
- 成果物のレビューを書けるのは批判担当だけ。自分の案を自分でレビューすることはできない
- 品質チェックの結果を記録できるのはQA担当だけ
- 案の採用を決められるのは統括プロデューサーだけ。しかも批判担当のレビューとQAの合格が両方揃わないと採用できない
- 記録は追記だけで、不採用案も消えずに残る
課金まわりも固くしてあります。サブスクリプションの範囲でしか動かさず、有料の実行はオーナーの承認レコードがないとサーバーが記録ごと拒否します。AIに「ちゃんとやってね」とお願いするのではなく、ズルができない形にしておく。ここは人間の組織設計と同じでした。
架空案件をひとつ納品してみた
この仕組みの上で、架空の案件を一周させました。お題は「会議の議題と決定事項を一画面で整理する静的HTMLモック」。リサーチャーが要件を確認し、3つの候補案を作り、批判担当が全案をレビュー。その指摘をもとに統括プロデューサーが2案を理由付きで見送って残る1案に改訂を指示し、QAのチェックを通してから採用を決めて納品。台帳には31件のレコードが残り、課金はゼロでした。
人間の手動運用も挟んでいるので全自動の会社ではありませんが、「批判とQAを通らないと採用できない」というルールが機械で守られたまま、案出しから納品までが一周しました。
やってみて分かったこと
まず、AIの状態を可視化すると、裏で何が起きているかが本当に分かりやすくなります。進んでいるのが見えると安心して任せられるし、詰まっていれば気づける。オフィスで社員が動いているという見た目は、ログを読むより直感的でした。
もうひとつは、実際に仕事を振れるようにした途端、組織設計が必要になったことです。誰がレビューするのか、誰が採用を決めるのか、勝手にお金を使わせないにはどうするか。「ちゃんとレビューして」と頼むより、役割や承認条件を仕組みで強制する方が確実で、このルール作りは想像していたよりずっと本質的な部分でした。
ちなみに、後で作ったTiny Code Petも、同じHooksを使って作業状態を可視化する仲間です。あちらは画面の隅のひよこ1匹、こちらは会社まるごとという違いはありますが、発想の根っこは近いところにあります。
現在
AI Company Dashboardは、数日間の実験として想定していた仕組みを一通り動かせるところまで完成しました。ピクセルオフィスでの可視化から、実サブエージェントの追跡、仕事の割り振り、会社のルール、そして架空案件の完走まで。公開サービスにはしておらず、現在は常用もしていませんが、コードとProductionRunの記録はそのまま残してあるので、当時どこまで試したかは今でも追えます。