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個人サイト「ぽいもの本舗」を公開してからしばらく、細かな改善を続けてきた。Homeでは物理演算で落ちてくるブロックキャラクターが積み上がり、Projectsには作ったものを、Articlesには開発中に調べたことを置いている。Aboutや404、RSS、sitemap、OGPといった周辺部分もひととおり揃っていて、サイトの骨格に大きな不満はない。
それでも眺めていると、つい「次は何を足そうか」と考えてしまう。Tiny Code Petのページはもっと充実させられるのではないか。記事一覧に検索やタグ機能があれば、サイトらしくなるのではないか。
Claude Codeを使っていると、この種の思いつきを形にするハードルはかなり低い。以前なら実装コストを見積もった時点で自然に消えていたアイデアが、いまは数十分あれば試せてしまう。だからこそ一度、機能を追加する側ではなく、いまあるサイトを評価する側にClaude Codeを回してみることにした。

全ページをまとめて監査させる
対象は特定のページに絞らず、Home、Projects、Tiny Code Pet、Articles、公開済みの記事、About、404まで、公開している主要ページすべてとした。DesktopとMobileの両方を実ブラウザで開かせ、レイアウト崩れやエラーの有無だけでなく、情報設計、コンテンツ量、SEO、アクセシビリティ、パフォーマンス、技術構成、GitHubとの役割分担までを評価範囲に含めている。
依頼にはもうひとつ条件を付けた。見つかった項目を単なる改善リストにせず、P0 / P1 / P2 / KEEP / 不要に分類すること。とりわけKEEPと不要を入れたのは意図的で、AIに改善案を求めれば、直せる場所はいくらでも挙がってくる。今回知りたかったのは「何を追加できるか」ではなく、何をもう触らなくていいのかだった。
今すぐ直す問題は、ひとつもなかった
結果から言うと、P0、つまり公開品質を損なう問題はゼロだった。DesktopとMobileのどちらにも横スクロールはなく、JavaScriptのエラーもない。SEOやRSS、sitemap、構造化データはひととおり機能していて、パフォーマンスも現時点で追加の最適化は不要という評価になっている。Homeの物理演算や空中に浮かぶドローン、記事見出しの横に現れる小さなキャラクターに至っては、むしろ「これ以上増やさない方がいい」とまで書かれていた。
ここまでは状態確認として想定の範囲内だが、興味深いのはその先で、改善候補として挙がった項目の多くは機能の話ではなかった。
一番弱いページはAbout
監査が最も弱いと評価したのはAboutだった。理由は単純で、このサイトは「何を作っているか」は伝わるのに、「誰が作っているか」がほとんど見えない。検索機能がないとか、アニメーションが足りないとか、そういう指摘ではない。
対応も、新しい仕組みの追加ではなく文章で済ませた。元のAboutをほぼ残したまま、短い自己紹介を一段落だけ加えている。
Webに長く関わってきましたが、最近は生成AIを使いながら、自分で小さなアプリやサービスっぽいものを作っています。
あわせてGitHubへのリンクも置いた。変更量はごく小さいが、サイト全体の意味に対する効果で言えば、JavaScriptをもう一本増やすよりずっと大きい。このあたりで、監査前に考えていた「次に何を実装するか」という発想自体が少しずれていたことに気づく。
提案を、そのまま実装する必要もない
監査結果では、Tiny Code Petのページに実際の動作スクリーンショットを追加する案も、優先度の高い改善として挙げられていた。実物の画面があれば作品としての説得力が増すのは確かで、提案としては筋が通っている。それでも今回は見送った。現在の画像でも「デスクトップに小さなひよこが常駐するアプリ」であることは十分伝わっていて、似た画像を一枚増やすだけなら、必ずしも改善とは呼べない。
記事のOGP画像でも同じような判断をした。CloudflareとGooglebotの記事には16:9の図解があり、こちらはそのまま記事固有のOGPとして採用している。Claude CodeとMCPの記事のHero画像はかなり横長で、SNS向けの比率へ中央クロップするとタイトルの先頭やキャラクターが大きく欠けてしまう。Claude Codeに実際のクロップ画像まで作らせて確認したところ、「この画像をOGPに使うのはおすすめしない」という判定になったため、専用画像を新しく作る道もあったが、従来の共通OGPを使い続けることにした。
監査結果を受け取ったからといって、そこに並んだP1を順番に消化する必要はない。AIの提案は、採用・見送り・保留を人間側で決めるための材料にすぎない。今回の作業では、この線引きがいちばん重要だった。

機能を足した場所にも理由がある
監査後に機能をひとつも追加しなかったわけではない。記事詳細には「前の記事」「次の記事」の導線を足している。ただしこれは、サイトを高機能に見せるための追加ではなく、記事を読み終えた人がそのまま別の記事へ移れるようにするための小さな改善で、すでにあるコンテンツを読みやすくすることが目的になっている。新しい仕組みそのものに価値を置く追加と、この種の追加とでは、同じ機能追加でも意味がまったく違う。
結論は「機能よりコンテンツ」
監査には「機能とコンテンツのどちらを優先すべきか」という問いも含めていて、回答は明確にコンテンツ優先だった。Home、Projects、Articles、About、404。SEO、RSS、OGP、ナビゲーション。個人サイトとして必要な基盤はすでに揃っていて、ここへ検索やタグフィルター、ダークモード、コメントを積んでも、サイトの価値が同じ割合で増えるとは限らない。それより新しいものを作り、記事を書き、開発中に分かったことを残す。いまのぽいもの本舗に必要なのはそちらだ、という評価になる。
念のため書いておくと、Claude Codeが実際に「もう機能を足すな」と一言だけ返してきたわけではない。監査結果を総合すると、結論がかなりそれに近かったという話である。
AIで実装が速くなるほど、「作らない判断」が必要になる
Claude Codeを使うようになって変わったのは、作れるものの範囲だけではない。実装コストが、アイデアを捨てる理由として機能しにくくなった。以前なら「面倒だから今回はやめておこう」で自然に止まっていた機能も、いまは試せてしまう。ページの追加もUIの変更もデータ構造の変更も、以前よりはるかに軽い。
便利であることは間違いない。そのぶん、作れることと作るべきことの距離は大きく開いた。だから人間側に残る仕事も変わってくる。何を作るのか。何を残すのか。どの提案を見送るのか。そして、どこを完成とみなして次へ進むのか。
今回サイト全体を監査させて一番価値があったのは、新しい改善案を出してもらえたことではなく、「ここはもう十分」という場所が見つかったことだった。そして、その結果として書いているのがこの記事になる。機能をもうひとつ増やす代わりに、サイトに置くものをひとつ増やした。いまのぽいもの本舗には、たぶんこの方が合っている。